手紙と日常の間


『 将へ 

 お元気ですか?
 私もお父さんもお母さんも元気だよ。

 初めての九州の冬を体験し終わって季節で言うと今は春なんだけど
 コッチも寒いです。
 九州て暖かいイメージがあったんだけど場所によっては雪も降るんだって
 カズ先輩が言ってた・・・・・
 東京はどう?雪降った?
 
 もう3月だから降らないか・・・・・

 そういえばバレンタインのチョコなんだけど14日に渡せなかったの・・・・・
 
 朝からカズ先輩、なにかあったのか怒ってから
 
 「なにか、あったのですか?」

 て、聞いたんだけど答えてくれなくて、
 どうしたのかなぁ・・・なんて思って学校に行ったら
 カズ先輩の下駄箱にチョコがイッパイ入って、凄かったの!
 
 上靴が見えないぐらい入ってて!!
 
 下駄箱にフタがあったら、空けた瞬間、
 マンガみたいにチョコのなだれ見れたのに・・・・
 
 「こげん卑怯な事せんと正面から来いや」

 怒ってた・・・・
 でも、カズ先輩に直接渡す人もいたんだけど断ってた。
 
 チョコは嫌いだから気持ちだけ貰っておく、て事かなぁ?
 でも、チョコ嫌いの人はバレンタイン大変かも・・・・ 

 将はチョコ貰った?
 私は15日の日に渡したよ。

 本当は14日に渡そうと思ってんだけど、カズ先輩も昭栄君も城光先輩も
 イッパイ貰ってて私まで渡すと持ち帰るのが増えると思って
 15日に渡したの。

 昭栄君なんか
 
 「から貰えなんてバリ悲しかった」

 涙を流しながら受け取ってくれたの。

 城光先輩は

 「ありがとうな。ちゃん」
 
 て、お礼言われちゃった。

 カズ先輩は、受け取ってくれないかな?
 て、思ったんだけど

 「折角の手作りやけん貰っちゃる」

 皆に断られたら・・・
 なんて思ってドキドキしてたんだけど、
 お世話になりました、今後もよろしくお願いします。
 の意味のチョコだから、皆の彼女さんがいても大丈夫!

 3月14日のホワイトデーにお返し貰っちゃいました・・・・・

 昭栄君はに言われるまで忘れてたみたいで、
 持ってきていたお菓子をくれました。

 城光先輩は
 雪うざぎが付いているシャーペンとこの便箋
 それにイチゴミルクのアメをくれました。
 
 カズ先輩は
 夕食を作ってくれました。
 お手伝いをしようとしたら
 
 「座って待ってろ」
 
 て怒られたの
 ドリアすっごく美味しくて作り方を聞いたから今度作ってみるね!

 そして今日は終業式で気が付いたたら保健室にいて
 何故かベットの上で正座して怒られてます・・・・・ 』


「そげんなるまで、なんで黙っとうや!」

「カズ先輩に、ご迷惑がかかると思いまして・・・・・・」

「倒れた方が余計に迷惑がかかると思わんかったと?」

「・・・・スミ・・マセン・・・・・」

体中から重い空気を出すようなため息をすると
の体を大きく揺れ、次にくるであろう言葉に備えているが、
目の前にいるカズではなく少し離れた所に立っている場所から声がかけられた。

「カズ、今日の練習は3時やけん。ちゃん送ってもだいじょうぶや
 はよ、ちゃん送ったり」

そのままじゃ、また倒れそうやけんな

普段とは違い、青白く呼吸も荒くなっている
少しでも無理をすれば倒れそうなぐらいフラフラしており
先ほどのカズとの会話も必死になってようやく出来る状態であった。

「・・・・しかたなか。
 送ったらすぐ来るけん、ヨシ俺の荷物頼む」

言葉を言い終わると、カズはをひっぱりながらベットから下ろすと
が歩きやすい様支え、保健室から出て行った。

「功刀先輩、のカバン忘れとりますね・・・」

「カズに持たせれば良か」

「練習にくるとですか?」

「くるやろ」

先ほどのなりゆきを見守っていた人物達が
各々に話を作り会話を続けた。

「そうですね。
 『私は大丈夫なので練習に行って下さい』
 と言いますけんね」

少女が自分の言った言葉をが言っている処を想像し
軽く笑っていると

「カズはちゃんには弱いけんな。
 練習が終わったら、ちゃんの両親が帰ってくるまで看病するやろ」

少女の言葉に頷き、長い付き合いをしている間柄からか
練習後の予想を立てていると

、大丈夫やろか・・・・・」

先ほど2人が出て行った出入り口を見ながら言葉をこぼすと

「タカ、心配なかよ。
 カズやて男や、ちゃんが倒れてもカズが背負って帰るやろ」

心配する言葉が聞え、言葉を返すと少女が笑いながら
話を続け

「功刀先輩もに甘いですけど
 城光先輩もには甘いかとですよ」

「玖珠には負けとるよ」

「うがぁぁああ、が心配になってきたとですよ!!」

「タカ・・・はただカゼや。
 そげん心配せんでも良か」

勢い欲く自分の頭をかきながら叫ぶ高山を、城光が宥め始めるが

「せがらしか!!功刀先輩がおるけん大丈夫や言うとぉのに
 さっきから何騒いどるとね!」

の言葉と共に高山の背中に回し蹴りを入れ
怒りを表し保健室から追い出され
城光と、2人きりになった。

「玖珠、女子が回し蹴りはイカンとはいわん。
 だけん、スカートでは止めた方が良かよ」

先ほどの蹴りと怒鳴ったせいか肩を上下に揺らし、出入り口を見ていた
の城光は言葉をかけると、は振り向き

「履いてますけん、心配なかとです。
 それより、チョコのお返しにシャーペンとレターセットだったんですね」
 
「そげんこと、どげんして玖珠が知っとね?
 ちゃんに聞いたと」

の言葉に、少し目を見開き驚きながらも
との関係を思い出し自分の中で答えを見つけ納得するが

「それもありますがコレを読んだとですよ」

右手に持っていた白い封筒と桃色の紙を城光の視界に入る高さに
持って行き、見せると

「あぁ、の兄に送る手紙ちゃね」

どこか見た事のある色とデザインにが持っている紙が
自分が渡した便箋だと解ると、受取人もがダレなのかが解り納得する。

「まだ、書きかけですけん今日の倒れた事も書くかもしれません。
 そげんしても、功刀先輩は料理も出来るとですか・・・・
 から話は聞いとったんですけど、
 アノ功刀先輩が台所に入る姿が想像できなかとですよ・・・・」

しかもドリアですよ!?

が書いた手紙を見ながら、困惑な表情をし
目の前にいる城光に話すと

「まぁ、カズは器用やけんなぁ・・・」

と、苦笑しながら言葉を返した。

「そげんしても、料理の腕前が主婦並というのはどげんなものでしょうか?」

呟くの言葉に、さすがの城光も返す言葉が見つからなかった。

そんな会話が繰り広げられている同時刻

「スミマセン、カズ先輩・・・・」

「そげん思うならこげん事になる前に早めに言う事やな」

「はい・・・」

下校中、ついに動けなくなったを背負いながら
帰るカズの姿があった。




その後、練習時間に遅れる事無く
出てきたカズに城光が話しかけた。

「カズ、ちゃんは、どうしたと?」

「粥食わして、薬飲ましてきた」

手に付けていたグローブを口に咥えて外し
城光の質問に答えを返すと再び城光から言葉がくる

「家まで歩いて帰れたと?」

「無理やった。だけん途中から背負って帰ったとね」

「そげん悪かと?」

「みたいやな。ヨシ先に帰るけん、後よろしく」

話ながらも着替えを休める事無くすると
所々にテーピングの巻かれている手は同じカバンを2つ持ち
足早に歩き、城光から離れていった。

「オレもちゃんには甘か。そげん事は解っとるが
 カズは甘すぎるやね・・・その上、心配性か・・・・・」

一人部室に残され、ため息と共に出た言葉は消えていった。